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小泉 智
Physica B; Condensed Matter, 241-243, p.973 - 975, 1998/00
被引用回数:1 パーセンタイル:11.82(Physics, Condensed Matter)研究に用いた液晶性コポリエステルポリマーは、融点以下の低温で完全な結晶化をせず、分子配向を保持したまま異方性ガラスを形成する。このような異方構造をもつ高分子に対して中性子非弾性散乱実験を行い、デバイワーラー因子から水素の局所運動の平均自乗変位とノンガウシアンパラメータを評価した。波数ベクトルが分子軸と直行する方向では、各温度でノンガウシアンパラメータが重要で、温度の低下とともに増大する。他方、平行となる方向ではノンガウシアンパラメータは各温度で小さく、温度に依存しない。両光学系について平均自乗変位は温度に比例して増大する。分子軸と平行の方向では、共有結合が局所構造を拘束するのに対して、分子軸と直行する方向では分子軸周りの回転の自由度が存在し、これは周辺の分子が作る「異方的Cage」から拘束を受けているものと思われる。この異方的Cageの中の分子の局所運動は、デバイワーラー因子の非調和性に大きく寄与し、温度の低下とともにガラス化の指標とするノンガウシアンパラメータの増大をもたらしている。
小泉 智
Journal of Chemical Physics, 107(2), p.603 - 612, 1997/07
被引用回数:4 パーセンタイル:16.59(Chemistry, Physical)液晶性高分子を構成する芳香環の回転運動を、水素に由来する中性子非干渉性散乱を観集することで解析した。この高分子は2元ランダム共集合体(p-benzoic acid/2hydroxy-6-naphtoic acid 73/27(mol/mol))で、285Cでアモルファス相からネマチック液晶相へと転移する。中性子散乱の非干渉成分を、(1)水素の振動運動によるデバイクーラー因子、(2)芳香環の回転運動による非弾性干渉性構造因子(EISF)、(3)同じく回転運動による準弾性散乱(QENS)の3成分に分離した。このようにして得られたEISFとQENSは、ネマチック相で、芳香環が分子軸まわりを自由回転するモデルで良好に再現された。また転移点以下のアモルファス相で、EISFとQENSの波数依存性が小さくなり、この変化は回転運動が自由なものからより拘束されたものへと移行したことを示唆する。
小泉 智; 西条 賢次*; 橋本 竹治*
Progress of Theoretical Physics Supplement, (126), p.223 - 228, 1997/00
液晶性高分子を構成する分子骨格の局所構造緩和を熱中性子とX線をプローブとして観察した。中性子非弾性散乱で得られるのは、水素に由来する非干渉性散乱とその他の原子に由来する干渉性散乱である。一方、X線では干渉性散乱のみが得られる。両者の結果を用いることで中性子散乱の結果から非干渉性部分を抽出することができた。得られた非干渉性弾性散乱は、振動、回転といった水素の局所運動を反映している。系を低温から昇温してゆく過程での散乱の変化に注目し、振動運動と回転運動の寄与を分離することができた。得られた弾性非干渉性構造因子(EISF)の波数依存性から、液晶相転移温度で高分子を構成する芳香環の回転運動が自由回転運動に転移することが確認された。